有機エレクトロニクス分野におけるフラーレンの応用
さる2月5日、北九州市学術研究都市学術情報センターにおいて財団法人九州産業技術センター主催の第三回産学実用化研究会が開催された。今回は九州工業大学生命体工学研究科教授の金藤先生がコーディネートに御尽力され、韓国・台湾からも新進気鋭の研究者を招いての「アジアにおける有機ナノエレクトロニクスの最前線」と題し最新研究・技術に関する講演と活発な討論がなされた。その材料候補として話題になっているフラーレンについて、弊社にも説明・PRの依頼があり対応させて頂いた。
有機エレクトロニクス分野は、近年機能性有機材料を用いた有機発光素子や有機太陽電池などが注目を浴び、既に市場にも登場してきている。このデバイスはフレキシブルで軽量、低温プロセスや大面積塗布による低コスト製造等が期待され、ユビキタス社会のみならず近年ではエネルギー問題・地球温暖化・環境保全の観点からも、近い将来産業上で重要な位置を占めるものと予想され、世界的に熾烈な研究開発競争が成されている。
今回のセミナーでは金藤先生の有機エレクトロニクス全般の概要紹介に続き、韓国Postech大学・Shin先生の分子エレクトロニクスと韓国におけるナノテクノロジー研究政策動向、九州工業大学・早瀬先生の第一人者として色素増感型太陽電池について詳細な解説、台湾交通大学・Zan先生の各種有機薄膜トランジスターの研究動向、最後に九州工業大学・永松先生の「有機デバイス研究開発の動向」と題した最新の研究結果の発表があった。
有機エレクトロニクス全般の議論だったが、有機薄膜太陽電池や有機TFTではPCBM(phenyl C61-butyric acid methyl ester)等のフラーレン誘導体がn型半導体としては特筆すべきデータを叩き出しているという事もあり、何人かの先生の発表にはフラーレンが登場していた。また永松先生からは最近話題となっている有機TFTの膜内構造と性能との関係について、フラーレン誘導体を例にして興味深い研究結果が提示された。弊社もその電子状態・反応性に強く関わるフラーレンの化学構造の開発に加え、デバイス中で性能を効率的に発現する結晶や凝集の状態を意識した開発(例えばモルフォロジー等)も重要であることを強く感じさせられた。
弊社からは昨年後半実施したPCBMならびに高純度フラーレンC60のキャンペーンが、特に有機デバイス開発を意識したものであったので、これと最近の話題を紹介させて頂いた。聴講者からはフラーレンビジネスの現状等一般的な質問のほか、使用されている系中でのフラーレンの形状・形態が影響した具体的な性能・物性の実例についての質問もあった。懇親会でもデバイス性能へ影響を与える因子について、化学構造なども含めていろいろな切り口で引き続き活発な議論が行われ、デバイス側と材料側で課題の共有化ができた。まだ有機薄膜太陽電池や有機TFT等はこれから詳細な研究が進められる領域ではあるが、その魅力とともに研究方向性が見えてきているのではないかと感じた。
韓国・台湾では一部を除き有機エレクトロニクス分野でのフラーレン活用は盛んではないようだが、今後に是非期待したい。また今回講演された九州工業大学をはじめとして北部九州にこの分野の著名な先生方、整備されたインフラや学生諸氏などおられる点、今後日本の有機エレクトロニクスの研究拠点となることを期待している。また弊社も北九州に製造開発拠点を持っており、この地の利を活かして材料面で有機デバイス開発の一端を担いたいと考える。