炭素繊維強化プラスチックスとフラーレン
炭素繊維強化プラスチックス(CFRP)は、航空宇宙分野、建築土木分野、電子機器・産業機械分野、自動車や鉄道、エネルギー分野等、幅広く利用されており、身近な所ではゴルフのシャフト、釣竿、バトミントンやテニスラケット、最近ではスノーボード等多くのスポーツ用具に用いられています。その特徴は金属材料等に比べて著しく軽量で高強度・高弾性率を実現出来る為です。フラーレンをこのCFRPを構成する樹脂マトリクスに少量添加することで、さらなる高性能化が達成され、多くの商品が販売されています。
具体的にはフラーレンの添加により、耐衝撃性、ねじり強度が20〜30%向上する事が報告されており、このアドバンテージが直接物性の向上として、あるいは軽量化、更には重心や「しなり」等の構造設計上の自由度を得る為に利用され、従来にない性能の実現に一役買っています。
このフラーレン添加による機能発現機構については樹脂マトリクスへの効果および樹脂−炭素繊維界面の効果が推定されます。特に前者については、典型的なエポキシ樹脂jER828への添加において、0.1wt%以下のごく少量の添加で曲げ強度・弾性率の向上効果が見られる事が弊社検討で判明しています。
混合フラーレン(ナノムミックス)配合による
エポキシ樹脂の強度および弾性率の向上
また、添加量の少なさもさることながら、通常、フィラーを樹脂に添加した場合は、その添加量に対して相反する関係となる事の多い強度と弾性率が、いずれも向上するという興味深い現象も観察されています。これは文字通りフラーレンが1nmの球状分子である事に起因するナノフィラー効果とも推定できますが、多くの機能材料がそうであるように、現時点では機能発現のみが先行しており、詳細なメカニズム解析は今後の課題と考えます。また、フラーレンは超芳香族分子の異名の通り、構造的に芳香族環の集合体でもありますので、芳香族環を有する樹脂とグラファイト構造を有する炭素繊維表面との界面で何らかの役目を果たしている可能性も考えられます。これら機能発現機構に関する情報を得るべく、弊社としてもフラーレンを添加したCFRPの基礎データ採取を開始しました。
スポーツ分野に加え、今後様々な分野や用途のCFRPにフラーレンが役立っていくことを期待しています。